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【GP横浜モダン】トリコトラフトで50位入賞した話

マジックフェスト横浜2019の本戦、2500人が参加したグランプリ横浜で55位という成績を収めることができました。

戦績は11勝3敗1分けの34ポイント。

デッキは愛用のトリコトラフトを使いました。

 

Day1
R1 bye
R2 bye
R3 緑トロン ×○-
R4 青赤フェニックス ○×○
R5 唸りプリズン ○○
R6 青赤フェニックス ××
R7 ドレッジ ○○
R8 青白コントロール ○○
R9 人間 ××

 
Day2
R10 bye
R11 エスパーコントロール ○○
R12 BG ○○
R13 緑トロン ×○○
R14 青赤フェニックス ××
R15 ドレッジ ×○○
 
まずこの成績に至るまでには、多くの友人たちの協力と理解ある妻の応援、そして幸運の連続のおかげであったことをお伝えしたいと思います。謙遜ではなく、当日会場にいた誰よりも運を味方につけたプレイヤーであったと思っています。
ただそれだけではなく、自分なりに誇れる程度の練習量は積んできており、自信もありました。
そのため本稿では、自分のようなカジュアルプレイヤーが運込みで勝率6割を出せるプレイヤーに成長した練習録を中心に綴りたいと思います。
  

 

目次

1.これまでの事と目標設定
2.デッキ選択
3.練習方法
4.デッキリスト決定
5.ラストチャンストライアル
6.グランプリ本戦
7.おわりに

 


1.これまでの事と目標設定

自分がマジックを競技志向で取り組むようになったのは約2年前。PPTQ優勝を漠然とした目標とし、マルドゥ機体やティムール霊気池がtier1の中、呪文捕らえを搭載した独自のエスパー機体で出場していました。

しかし32人程度の大会ですらtop8に残れない体たらく。

ただでさえパワーが低い独自のデッキを使っているのに、練習時間不足という二重苦を抱えては、しっかりと調整を重ねてきた相手に勝てる道理もありません。

懲りずに昨年のモダンシーズンPPTQにも参加しますが、少人数の大会にてやっとのことtop8に残ったと思えば、準決勝のジェスカイコントロールミラーに散る結果となりました。

 
PPTQだけでなく、グランプリに出場したこともあります。愛用の呪文捕らえのスタン落ちによりスタンダードを退くことになった私は、コミュニティにも恵まれ週数回のドラフトに励んでいました。

「ドラフトにはマジックの大切な事が詰まっている」 とは知人の準プロプレイヤー宇都宮さんの弁ですが、その言葉を糧にドラフトを通じたマジック基礎レベルアップを目指していました。

 
一つのゴールは、地元幕張メッセで開催されるグランプリ千葉2018リミテッド。多くの友人がday2進出を目標としていたため自分もそれに倣い、ノーbyeから6-2という厳しい闘いに挑むことになります。
しかし現実は甘くない。比較的強い赤黒アグロを組むことができ4-2と奮闘するも、フルパンすれば勝てる状況で除去に怯えて安全なコンバットを選択してしまい、それを咎める次ターンの「苦悩火x=6」。それでgame1を落とし、game2を取り返すもののgame3で相手のシステムクリーチャーが止まらず敗北。
 
負けた瞬間の、血の気の引く思い、悔しくて右手を差し出せないあの感情を今でもハッキリと覚えています。これだけ練習してきたのに終わってしまった。目標を達成できないことの不完全燃焼。自分はこれほどに競技マジックに強い拘りがあったのだと気付く機会となりました。
 
PPTQ制度が終了してしまった今、自分に残された目標は「グランプリ2日目進出」のみでした。

 


2.デッキ選択

「モダンは情」。とはいえ情だけで勝てるほどマジックは甘くはありません。

私にとっての「情」は呪文捕らえというカード、そしてジェスカイというデッキでした。

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共にスタン落ちした相棒
GP横浜の頃のモダン環境を見渡せば、ジェスカイというデッキは最悪の選択肢。屈指のデッキパワーを誇るイゼットフェニックス、ドレッジ、それを狩るトロンとメインから墓地対策と土地破壊を講じた青白コントロール、BGというメタゲームです。
元々クリーチャーデッキに強いとされるジェスカイにとっては有利が一つもつかない状況。土地対策カードも3色の不安定なマナベースにとって向かい風となり、「ジェスカイは死んだ」と言われる程の評価でした。
 
しかし、実際に大会に出てみればデッキは多種多様です。バーンやスピリットはややキツイですが人間、親和、アドグレイス、アーティファクト系コンボなど相手には有利に戦うことができます。
 
メタゲームに動きがないとしても、モダンの使用率から言って連戦フェニックスやドレッジばかりに当たるとは考えにくく、残り7割は別のデッキ。
幸いフェニックスとの相性が体感五分であったこともあり、残り3ヶ月でパワーの高いデッキを組み一から練習するよりも、仮想敵を中心にジェスカイで6割勝てるプレイを身につける方が合理的に思えました。
 
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tier1域のデッキ
  • イゼットフェニックス、BG、死の影 →五分なためプレイングを磨く
  • トロン、ドレッジ →キラーカードでサイド後勝つ
tier2以下のデッキ
  • クリーチャーデッキ →有利
  • 青白、タイタンシフト →不利。デッキ全体の最適化が必要
  • バーン、アミュレットタイタン →キラーカードでサイド後勝つ
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ミッドレンジデッキであるため、やはり自分よりアドバンテージに優れた青白のようなデッキと、アドバンテージを無視してくるトロンやタイタンシフトが厳しくなります。
聖トラフトの霊はジェスカイの定番サイドボードですが、これらのデッキに対する明確な勝ち筋となるほか、フェアデッキにも強いために気に入っていました。
思い切ってメインから3枚投入したトリコトラフト型にし、マジックオンラインでの練習を開始しました。
 


3.練習方法

1月末にラヴニカの献身が発売され、GP横浜におけるメタゲーム形成が始まりました。
私が練習手段として選択したのはマジックオンライン(以下mo)で、300ドルほどで紙同等のトリコトラフトを組むことにしました。安くはないですが、moの効率性を考えれば充分見合う投資です。
 
具体的な練習ノルマとして、以下を課すことに決めました。
・必ず毎日1マッチ
・休日は5マッチを目標
→週間15マッチ、GP前週までの10週間で150マッチが目標。
 
スポーツでも楽器でも、一日やらないと下手になるとはよく言われますが、自分が一向にマジックで上達しないのもそれが理由ではないかと感じていました。
毎日1マッチは想像以上に辛く、飲み会を終えて深夜帰宅してからパソコンを起動する日も少なくありませんでした。半ば意地ですが、毎日積み上げたものを崩さないようにという思いで必死でした。
 
そんな生活を始めてから1週間、思いのほか早く成果が現れ始めました。マリガン判断や土地の置き方を瞬時にミスなく行えるようになったのです。「トロンにこの初手はダメ」「打消し意識させてここはフェッチを置く」。
例えミスしてもその違和感にすぐ気付けるようになり、翌日の試合では早速そのミスを矯正する機会が与えられるという好循環が生まれました。
 
また、毎日の練習により、グランプリの8回戦を戦いぬく体力を身につけることもできました。以前までの自分なら3マッチ程度で疲労困憊していたのが、この期間中に参加した店舗大会では6回戦を軽くこなし、帰宅後喜んでmoを起動できるほどになったのです。
 
さて、moのリーグは二つ用意されており、調整初期は色々なデッキとマッチングしたいため、比較的カジュアルなフレンドリーリーグに参加しました。フレンドリーリーグは2勝すれば参加費が半分戻ってくるため、資産が減りづらいメリットもあります。
終盤の3週間程度はtier1デッキや、より強豪プレイヤーとのマッチングを求めて競技リーグに参加しました。
 

moのリーグでは仮想敵を決めて大祖始の遺産や残骸の漂着などキラーカードを積極的に試しました。また、実験的なサイドチェンジを行い「アリ、ナシ」を早めに決めていきました。例えば、赤いデッキ相手に呪文捕らえをすべてサイドアウトして稲妻を腐らせるのはどうかや、安らかなる眠りを入れるなら瞬唱の魔道士を減らしていいのかなど、デッキを壊しかねない事もmoでなら遠慮なく試すことができます。

 
広く言われる「セオリー」を経験的に身につけられたのも大きかったように思います。具体的なものをいくつか挙げておきます。
  • 一本目先手では血清の幻視を打たない(土地を探す場合はok)→相手により欲しいカードが異なるため。
  • 血清の幻視がある場合はまずフェッチランドから置く→シャッフルしたくないため。
  • 廃墟の地を置かれている場合は優先して天界の列柱を寝かす→相手が割ってくれたらマナが増えるため。
  • 稲妻のらせんがある場合に島から置いたらダメ→次ターンに打てないだけでなく、ライフが大事マッチアップならどうせショックインして使うことになるため。
  • コーの火歩きをサイドインした場合は、初手になくても青白ランドから置く→次のターン引いた場合に出せるように。
 
これらの戦績と、試合を通じて得られた知識はすべてTwitter#モダン走り込み というハッシュタグを添えて書き込んでいます。
「グリセルシュートがメインから月。儀式から2ターン目に出ることも」「BG相手のメインボードでヴェンディが序盤に着地しライフレースを制した」「不朽の理想の暦伝能力は墓地から追放しても残る」など、有象無象な記録は50以上に及びます。

記録をふりかえれば、
10週間で計185マッチ。117勝68敗という戦績が積み上がっていました。

 


4.デッキリスト決定

最終的なリストは以下のようになりました。
 
4 瞬唱の魔道士
4 呪文捕らえ
3 聖トラフトの霊
1 ヴェンディリオン三人衆
 
4 流刑への道
3 稲妻
2 呪文貫き
1 外科的摘出
4 稲妻のらせん
2 論理の結び目
3 謎めいた命令
4 血清の幻視
1 ドミナリアの英雄、テフェリー
 
4 溢れかえる岸辺
2 沸騰する小湖
2 乾燥台地
2 神聖なる泉
2 蒸気孔
1 聖なる鋳造所
3 天界の列柱
2 硫黄の滝
1 廃墟の地
3 島
1 山
1 平地

サイドボード
2 コーの火歩き
2 アゾリウスの造反者、ラヴィニア
1 イゼットの静電術師
1 外科的摘出
1 摩耗 // 損耗
1 残骸の漂着
2 安らかなる眠り
2 石のような静寂
2 減衰球
1 ドミナリアの英雄、テフェリー

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二日間を駆け抜けたデッキ

 
調整の過程でしっかり考えたカードのみ解説します。
 
稲妻3、稲妻のらせん4
稲妻はフェニックス、ドレッジ、コントロールのいずれにも弱いですが、BG戦の後手盤で闇の腹心を除去するなど稲妻のらせんでは出来ないことも多いため、バランスを見て3枚にしました。
稲妻のらせんはジェスカイ最大のメリットと感じており、バーン戦はもちろん、初手に複数あればドレッジやBGに対しライフレースを仕掛けるプランを取れるため最大枚数採用すべきです。

呪文貫き2
イゼットフェニックスの魔力変、ドレッジの安堵の再開が厳しく、軽く弾けるカードが必要でした。呪文嵌めにできない事としてヴェールのリリアナ、トロン初動の地図、カーンなどこのデッキに辛いアクションへしっかり触れるほか、呪文捕らえへの稲妻をカウンターすることでそのまま勝ててしまうゲームがよく発生したため、デッキに合っているように思います。

ヴェンディリオン三人衆1
ドミナリアの英雄、テフェリー メイン1サイド1
トロンやタイタンシフトに対して弱いテフェリーと比べ、ヴェンディはあらゆるデッキに万能であるためメインボードへ。コントロール相手にライフを攻めるデッキ方針とも一致しています。マナ域が呪文捕らえ、聖トラフトの霊と同じで重くなりがちなため採用は1枚に。
一方で、BG系統のフェアデッキとはクロック源を用意した上でのパワーカードの叩きつけあいになる事が多く、テフェリーが一枚でも多く必要です。

アズカンタの探索0
強いカードですが廃墟の地が多すぎて機能しません。相手のみアズカンタが入っている状況だけは避けなければならないのですが、青白コントロールが採用していなかったため問題なく切ることができました。

コーの火歩き サイド2
バーンへのキラーカードとして採用。機を見た援軍は汎用性が高い分、バーン相手には頭蓋割りをケアするため打ち消しとセットで引かなければならず使いづらさが目立ちました。こちらは引いて出せば絶対に勝てる点が良いです。

アゾリウスの造反者、ラヴィニア サイド2
トロンをターゲットとしつつ、直前に流行りだしたアミュレットタイタン、アドグレイスに対しても置物クロックとして有効なため最後まで続投しました。呪文捕らえとのシナジーを期待しましたがほとんど発生せず、刺さる刺さらないがハッキリしているため今後の環境次第では抜けると思います。
 


5.ラストチャンストライアル

グランプリを目前に控え、今一度day2進出という目標の達成可能性を冷静に分析する必要があります。
先述の通り、10週間での戦績は117勝68敗。勝率は63%となりました。グランプリは8回戦で6勝する必要があるため勝率8割を目指していましたが、6割では5-3しかできないのです。moと比べてフェニックスやドレッジに多く当たることを考えると5勝すら怪しい状況です。
 
この時点で、本戦前日のラストチャンストライアルを制し2byeを獲得するのが半ば必須となりました。ラストチャンストライアルは勝ち抜けの4回戦レースですが、負けたらすぐ次に出られるためノーbyeのプレイヤーにとってはまさに最後に与えられた希望。主催者の思惑通りといったところですがそんなことを気にしている場合ではありません。
 
R1アークライトレッド ×○×
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R1BG ××
---
R1アークライトレッド ○○
R2グリクシスシャドウ ×○○
R3bye
R4アドグレイス ○○
 
勝ち抜け戦ゆえの奇跡といいますか、ここでも豪運を発揮し三回戦でbyeが発生、望外の4勝を達成
作戦通り2byeを獲得することができました。

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7500円の戦果


6.グランプリ本戦

本戦の成績は冒頭の通り11-3-1。day2の初戦でも対戦相手が来ないというトラブルが発生したため、実際戦績は8-3-1となりました。
 
本戦の勝率は66%。ラストチャンストライアルを3-2と考えるとこちらは60%。もはや笑い話ですが計算通りに正確な6割プレイヤーで、練習以上の結果は絶対に出ないという事です。
 
本戦で印象深かったのは、やはりday2進出をかけた8回戦のバブルマッチ。相手は青白コントロールで、練習通りにライフを攻め常にプレッシャーを与えるプランで完走。聖トラフトの霊の強さが光る試合でした。
決着の瞬間、対戦相手は笑顔を絶やさず「明日頑張ってください」という一言を贈ってくれました。相手の気持ちを思うと目の前で手放しに喜ぶことはできませんでしたか、その一言に救われた気がします。
 
そしてもう一つは、day2の最終戦であるドレッジとの戦い。すでに目標を達成していたため、長期間迷惑をかけた妻にせめて賞金を持ち帰りたいというモチベーションで臨んでいたday2、4-1で迎えた最終戦は賞金圏内をかけた試合でした。
 
game1は最高速度でのぶん回りを受けてあっさりと負け。game2は初手に安らかなる眠りと外科的摘出を引き込み、速度が落ちたところを聖トラフトの霊で殴りきり勝利。
そしてgame3。初手は悪くなく、血清の幻視で墓地対策を見つければ文句のない手札でしたが、相手がぶん回ると勝てないために勇気のマリガンを選択。幸運の女神はいるもので、占術した先に外科的摘出を見つけ、相手を減速させます。そして、キャストされたドレッジカードに対して、これ以上ない呪文捕らえ
ドレッジカードは墓地に落ちることのないまま、最後は呪文捕らえのクロックと、引き込んだ稲妻のらせんで勝利しました。
 
もしジェスカイというデッキを選択していなかったら、呪文捕らえが単なるカウンターだったとしたら、この試合は勝てていないかもしれません。
運命のいたずらのような劇的な勝利に、涙が溢れそうになりました。
 

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2日間で最上位の座席


7.おわりに

長くマジックを続けていると、中途半端なプライドや知識が成長の邪魔をします。
  • そこそこ勝てて、下手くそではない
  • 負けたのは事故や相性差のせいだ
  • デッキがあまり強くないから
  • 友人のアドバイスは自分のデッキのことをわかってない
モダンというフォーマットは愛用デッキを使い続けることを肯定しますから、私のように環境外とされるデッキを使っている方は似たような思いをしたことがあるのではないでしょうか。
 
しかし、どれだけ練習し、大会に出ようと、この言い訳ひとつで一日は水の泡です。
1ミリでも成長したいなら、試合後に相手のデッキのことを聞き、小さなミスを振り返り、サイドボードを振り返り、そしてメモすることが大切です。すぐに次の試合が始まりますから、言い訳などしてる時間はありません。
1ミリの成長の積み重ねが、いつか自分にとってのブレイクスルーに繋がります。
たとえ競技志向でなく、上手くなる必要性を感じていないとしても、好きなデッキを巧みに操れるというのは最高に気持ちの良いものです。
たかが6割しか勝てなかった私でさえこう思うのですから、間違いありません。
 
本稿は自分の話が多くなってしまいましたが、似た境遇の人にとって、少しでも参考となれば幸いです。
 
最後に、GP横浜に向けてご協力いただいた友人たちに心から感謝を。頑張っての一言にどれほど救われたか。アドバイスいただいたカードたちも全て試しました。GP横浜を通じて知り合った方々も多くいました。これからも続けていくので、よろしくお願いします。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。